仁義なき販売エリアの戦い
菓子業界の皆様も肌で感じられているように、今年の10月の売上は昨年との比較でほぼ同じか大して良くなかったのではないだろうか。
昨年の10月はコロナ禍が第5類に移行して、初めての秋で菓子のシーズンと言うこともあり、売り上げが好調だったようだ。加えて菓子自体の値上げがあり、数字ベースでは売り上げが伸びたと言う事実に他ならない。
しかしながらこの夏ごろからコロナ禍終了後の勢いと言う売上増は失速し、インバウンドの影響を考えたとしても、右肩上がりと言うのは少しおさまってきたように思われる。
また、そもそも良質な菓子を生産されている専門店さんは、そこまでの製造余力がなく、製造現場もマックスに達していると言う事情もあるようである。
そんな中で水面下で顕になってきたのが、今まで販売エリアを上手に分け合ってきた専門店の菓子店がいきなり他の地域に進出しているということである。
例えばに飲食や販売だけで3000店舗が入っていると言う東京駅の構内及び地下街を見てみると、それがよくわかる。
まるで全国のお菓子の総見本市のようにありとあらゆるものが販売されている。
そうやって考えるとスーパーや百貨店の催事などまで入れれば、既に東京で手に入らないお菓子はない位な勢いである。そして何よりも本来その地域のみで販売されていたものが、どんどんと東京や名古屋、大阪などの大都市圏を中心にいろいろなところに進出し、仁義なき戦いをしている構図となっている。
消費者も今や地域のものがすぐ手に入るとあるし、さらにネット販売などもあるので、その地域でしか買えないことにそこまでこだわっていないように思える。
ただ、専門店のお菓子には少し問題があり、実はとある地方のメーカーを参考にして作られた商品が、今度は同じエリアで隣同士で売られる。実はこの商品はとてもそっくりで一体どちらが元祖なのかわからなくなり、消費者が混乱したり、少しオリジナリティある菓子に対するリスペクトを失ったり、間違った情報が伝えられたりと言ったことになってるように思える。
本来ならばやはり気候風土が違う日本の47都道府県各地に珍しいお菓子があり、その地に旅行したら買って帰りたくなるような風情があるのがいいなと思えるが、それらが失われつつあり、結局旅行先ではあまりお金を落とさずに飲食のみで終わってしまうと言うことになっていくのは少し悲しいことと思えるのは私だけだろうか。
代表取締役 尾関 勇